小屋から少し歩いて左側の視界が開けてくると、剱沢を挟んで雄大に聳え立っている『剱岳』が視界に入ってくる。さすが岩と雪の殿堂といわれるだけあり、氷河が作り出したその峻厳な山容はとても素晴らしい。しばしの間、思わず魅せられてしまう。剱岳をバックにし、三人とも念入りに記念写真を撮る。祠の建つ別山頂上では富山の方の大学の山岳部やら、ワンゲルやらの集団に出会った。雪上訓練に来ているらしく、これから別山から雄山まで縦走するとのことだが、入り立ての新人も含め、こんな良いとこに訓練で来れるなんて羨ましい限りだ。
剱御前小屋に戻ると、いよいよ剱沢滑降開始。最長で真砂沢ロッジまで滑るということだったが、滑ったあとに登り返すのを考えると、やはりつらい。前二日の疲労も幾分かあるので、結局シールだけ持って剱沢小屋まで滑り、すぐに帰ってくることにする。剱沢の斜面は比較的緩やかで、初心者でも楽しめるという感じ。周りのトレースを見ると、別山方面や剱御前方面の急な斜面からも滑られているようだ。斜面もまあまあ良かったが、やはりここのポイントは、なんと言っても剱岳を眼前に見ながら滑るということだろう。あっという間だったが、剱岳に向かって滑降という最高のシチュエーションを楽しんだ。登り返し地点とした剱沢小屋は、まさに昔ながらの山小屋といった感じで、ホテルなんかが建ち並ぶ室堂付近とは、別山乗越を境に対称的な雰囲気があるように感じる。ここからは空身なので40分程であっと言う間に剱御前小屋まで戻り、続いて雷鳥沢の滑降に移る。中央の沢を滑ることにするが、両脇の尾根部分も滑降するには問題なさそうだ。滑り出しの斜面はなかなか急であり、滑りごたえは充分。その後も比較的急な斜面が続き、満足の行く滑降を楽しむことができた。ベースに着いたのは12:00前。天気を調べると明日は雪ということで、明日登る予定の雄山では展望は望めそうにない。そして今の状況を見ると、天気は雲一つない快晴。まだ体力も余っており、このままテントでだらだらして過ごすのはありえない・・・。ということで、急遽予定を変更して、現役二人で今から雄山にピストンをかけることにする。
一ノ越までは一時間ほどだが、暑さに意外と苦戦する。さらにここからは雪のない登山道を一時間ほど登って頂上へ。兼用靴なので多少歩きづらい。登っている途中で、別山で会った大学生集団とまたすれ違った。ところどころ雪の付く岩々する道を登り、ついに雄山頂上へ。まさに絶景の展望!!北ア北部の主要な山は全て見渡せ、南の方には遠く槍ヶ岳が聳え立っているのが見える。まわりのスキーやボードを担いだ人達は、雄山山頂から直接室堂へ向かって山崎カールに滑り込んでおり、最初はかなりの急斜面だが、なかなか面白そう。今度来たときはぜひ挑戦してみたいものだ。しばし展望を楽しんだ後、また一ノ越まで下り、ここからはスキー滑降。雪も良い感じに軟らかく、なかなか気持ちいい。室堂付近の複雑な地形を、雪庇にのらないように注意しながら進んでいく。途中で雪庇をハーフパイプに見立てて、ジャンプしているボーダーにはびっくりさせられた。雷鳥平に付いたのは16:00少し前ぐらい。昨日はあれだけ沢山あったテントも、だいぶ減ってしまっている。急いで天気図を書いてもらい、夕飯を食べ就寝。明日はいよいよ最終日。
ここからはタンボ平を黒部平に向けて、今回最後の滑降である。タンボ平は立山方面からのデブリが多々あり、休憩は禁物である。また沢沿いに黒い謎のラインが無数に走っており、正直自分たちが滑ったときは、全く滑降に向いてない斜面のように感じた。しかし室堂から黒部平までの4000円ほどの道のりをカットしたことになるので、その点では非常においしい。黒部湖に向かいロープーウェイ客に見られながら全装滑降し、10:00手前に黒部平着でワンダリング終了。天気も曇り以上に崩れることはなく助かった。荷物をまとめ、お土産を買った後、アルペンルートを信濃大町まで引き返す。信濃大町ではさくら食堂という、安値でボリュームのある料理を食べさしてくれる店で打ち上げ。白馬から出発して、日数にして4日程度であるが、なかなか濃いGWを過ごすことができたと思う。気候の穏やかな残雪期という時期で、厳冬期の厳しい山々とは違う山々の姿を感じ、山スキーの楽しさを再発見した気がした。今シーズンもそろそろ終わりかなと、満足感とすこし残念な気持ちが残ったが、まだまだ行きたいところはたくさんある。これからもっと技術や経験を積み、いろんな場所へ行ってみたい。
路線バス(信濃大町−扇沢)往復 2400円
トロリーバス(扇沢−黒部ダム)往復 2200円
ケーブルカー(黒部湖−黒部平)往復 1260円
ロープウェイ(黒部平−大観峰)片道 1260円
トロリーバス(大観峰−室堂)片道 2100円
荷物代(黒部湖−室堂)400円 スキー代(黒部湖−室堂)400円
(hiromitsu)